5月16日に岡山県に発令された緊急事態宣言。
岡山県の要望を受け、23日のV・ファーレン長崎との試合はリモートマッチとなった。
各部署は慌ただしく準備に追われる。緊急事態宣言が発令される前からリモートマッチの想定はしていたものの、この短時間に変更することはとても大変だ。
試合のイベントはもちろん中止、ホームページではリモートマッチになったことを伝えると共に、報道各社からの問い合わせに答える。広報部はその対応に追われた。
試合の運営を担当する運営部は、広場で行われる予定だったイベント中止の対応、様々な協力会社への連絡、試合を運営する上で必要なアルバイトの方やボランティアの方などへの連絡等をした。ボールパーソン、担架などの人員がいなくなったので、フロントスタッフの配置や人数の調整など、こと細かく調整し、スケジュールを決めていく。
担架の確認をするフロントスタッフ(澤口撮影)
それは、法人担当者にも同じように降りかかった。
スポンサーの皆さまに対してリモートマッチで行われることの説明をし、ご理解をしていただいた。法人担当者たちは広告の露出度が減るので、工夫ができないか模索し、意見を出し合う。
各部署がこのような対応に追われたのだった。
リモートマッチになってしまった以上、ファジアーノ岡山のフロントスタッフができる現状の最高を求め、スポンサーの皆さまへのよりよい対応、お客様への対応を各部署が指摘し合い、お互いを高め合っていくのであった。
お客様への対応という点では、今回も「みんなでDAZN観戦!」をファンエンゲージメント部の企画で実施した。1人で観るのではなく、スタッフと一緒に観ることで、より楽しく観戦してほしい。オンラインを通じて、少しでも関心を持ち続けてもらいたい。有観客の試合に戻った時に、たくさんの方にスタジアムに来ていただけるようにという想いが、本来の目的と経緯である。
今回は櫻内さんと私に加え、広報部の瀬島さんの3人がキャスティングされたのだが、おっさん3人では厳しいとの声が社内で挙がったのだろう…。今回も椋原健太さんを招いて行うこととなった。15分という短い時間でも出ていただきたいという私たち3人の力の無さ…。2日前の出演依頼にも関わらず、快く引き受けてくれた健太のファジアーノに対する愛を感じた。「健太ありがとう!」
試合当日は夏のような陽気で、青空が広がっていた。本来ならたくさんの方が来場してくださり、ファジフーズやファジビール、ファジレモンサワーをお楽しみいただけたのではないだろうか。広場は閑散としていて、物静かなスタジアムであった。
そんな中で行われる試合に対して、選手がいつも通り集中できる環境を届けよう、フロントスタッフの笑い声一つにしても、集中を妨げないようにしようという北川社長の言葉でミーティングを終え、フロントスタッフは各持ち場へ散っていく。
今回は前日準備が無かったので、当日に必要な分を準備することとなった。
私はサポーターの方が毎試合掲げてくれている、横断幕の設置を担当することになった。
今まで見るだけで触れることがなかった横断幕は、新しいものから歴史を感じるものまでたくさんあった。新しいものは生地が薄く軽いので、持ち運びしやすいが、古いものは布でできた横断幕で、結構な重さになる。熱い夏場も、寒い冬も、雨の日もこの横断幕を貼っていることを思うと、心が熱くなった。改めてサポーターの情熱と、偉大さを感じた。
手前から2人目が私
横断幕を張り終えると、YouTubeの準備に取りかかった。
スタジアムの一室はスタジオと化し、テレビを置いたり、カメラを置いたり、床にはコードが何本も通っていて、足を引っかけないように気をつけて歩かなくてはいけない。
スタジアムからの中継は初めての試みだったので、問題点がたくさん生じ、視聴者の皆さんには不快な思いをさせてしまった。反省を繰り返し、いいものをお届けできるようにみんなで努力していきたい。
ハーフタイムになり動画配信が休憩となった私が部屋を出ると、暑さに体力を奪われたスタッフや、日に焼けたスタッフを目にした。今回のボールパーソンはクラブスタッフが行い、担架もクラブスタッフで行なわれた。普段外に出ることの少ないスタッフが、気温の高い中で一試合、陽に当たるのは大変なことだったと思う。
そんな中で行われたリモートマッチは残念ながら、0-1で惜敗してしまった。
スタジアムは静かだった。
サポーターがいない静かなスタジアムを見て、改めてサポーターの応援が選手を後押しする原動力であり、限界以上の力を出させてくれる存在だと感じた。
早く日常に戻り、たくさんのサポーターがスタジアムに足を運び、皆さんと臨場感あふれるスタジアムをつくっていきたい。
試合前にスタンドの最上段から撮影しました(澤口撮影)
後日企業を訪問すると、新聞を見たよと言っていただいた。結果もそうだが、他のことが目に留まったようだ。生きるか死ぬかのプロの世界において、ワンプレー、一瞬が勝敗を分けることがある。日頃の練習から本気と本気がぶつかり合うわけなので、選手同士の意見が合わず、言い合いに発展することもある。私自身もそのような経験が何度もある。
仕事をしていると毎日のように目にしたり耳にする「子どもたちに夢を!」。どんな時でもこのクラブ理念を忘れてはならない。
このクラブ理念を胸に、前に進んでいこう。
澤口雅彦
ファジアーノ岡山に2009~2018シーズン在籍し、2020シーズンをもってプロサッカー選手を引退。
2021年3月下旬に株式会社ファジアーノ岡山スポーツクラブに入社し、新設した『クラブコミュニケーター』として、事業部門、および普及スクールコーチを担務し、地域とクラブの発展に寄与する活動をしてまいります。