澤口雅彦レポート~さわレポ25~ —夢を追いかける君へ—

先日サッカースクールに通っているのスクール生の一人に、ファジアーノ岡山のU-15セレクションに落ちたという子がいた。

落選した子のお母さんと話をさせていただいたところ、本人はセレクションに落ちたことに当然落ち込んでいたとのことだったが、この日も元気にスクールの練習に取り組んでくれていた。
かつての私も同じような経験をしたことは、さわレポ15でも書かせていただいた。
コーチも同じ経験をしたということを本人にも伝えたが、この日の取り組みを見ていて、彼なら今後もサッカーに対して一生懸命取り組んでくれることと思った。
そして、私は彼の性格や、サッカーに対する姿勢を子どもの頃の私と照らし合わせてもいた。
なぜなら、どこか似ている気がしていたからだ。
スクール中にコーチに果敢に勝負するところが一番似ている点…だろうか。

私も小学6年生時にサッカー少年団の練習に、元プロの選手が練習に来てくれたことがあった。練習に参加してくださり、試合では敵になったので、果敢に勝負を仕掛けた。一対一で対峙する場面があり、私が攻撃でボールをもった状況。
見事に相手の股を抜き置き去りにした。抜いて心の中で喜んでいた私だったが、その直後に車に激突したような衝撃を受けた。股を抜かれたその選手がボールを取りに体をぶつけてきたのだった。私はかなりの勢いで吹っ飛ばされてしまった。
さすがにプロでやってきた選手はすごいなと感じた瞬間だった。
その選手がどのくらいのパワーでぶつかってきたかは定かではないが、一部始終を見ていた人の顔を起き上がって見ると、みんな笑顔だった。股抜きをされて怒った状況に笑っていたようだった。転んで恥ずかしさが残っていた中だったが、元プロの選手を怒らせたことが嬉しかった。
その経験は今でも心の中に深く残っていて、印象深い経験の一つだ。

元プロの選手とサッカーをした経験は、他にもある。
元日本代表の木村和司さんである。イベントがあり私たちの少年団も参加させてもらった。ここでも試合が行われ、対戦させていただいた。
ボールをもった木村和司さん。テレビで見ていた憧れの選手であり、何としてもボールを取ってやると意気込んでいた。
そして、ついにその場面が訪れる。パスを受けた木村和司さんと対峙した。
お互い静止した1秒ほどの時間があった。その時間に嫌気が差した私は自ら取りにいった。
その動きを察知し、かわしにかかった木村選手。私の足はボールを触り、足と足もぶつかった。
ここからはエンターテイメントの話になるのだが、オーバーに倒れ、ファウルだとアピールをされた。周りの観客を楽しませ、得意なFKにもちこまれたのだった。
観客は皆笑い、楽しんでいる状況だった。半ば逃げられたというような状況で、悔しさが残る出来事だった。

私は、小さい頃から負けず嫌いで、運動会のかけっこだろうが、友達と遊んでいる時のテレビゲームだろうが、全てにおいて負けることが嫌だった。
その負けず嫌いな一面は、相手がプロであろうが果敢に勝負する勇気を生んだ。
この気持ちはとても大事だと思っていて、冒頭の彼にもこの気持ちを今後も大切にもっていてもらいたい。これから彼がどういう道に進んでいくのか、非常に気になるところである。
そんな彼を私は応援している。

選手を引退し、勝ち負けが日常や、毎日の仕事の一挙手一投足に現れることが無くなってしまった。
過去の記憶を思い出させ、その意識を再び持つことも今の自分には大切であることを呼び起こしてくれた。若いころにもっていた感情、エネルギーは大事であると、ふとした時に感じることがある。
思い出させてくれた彼に感謝し、私も彼に負けないように頑張りたいと思う。


澤口雅彦
ファジアーノ岡山に2009~2018シーズン在籍し、2020シーズンをもってプロサッカー選手を引退。
2021年3月下旬に株式会社ファジアーノ岡山スポーツクラブに入社し、新設した『クラブコミュニケーター』として、事業部門、および普及スクールコーチを担務し、地域とクラブの発展に寄与する活動をしてまいります。


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