澤口雅彦レポート~さわレポ26~ —11589.18—

2018年3月11日大分トリニータ戦での、とある数字。
表題の数字11589.18m(11.58km)は、その試合での私の走行距離である。今、私の手元に残っている現役時代の走行距離の一つだ。

データを取り数値化すること。どこの業界でも数値化したデータを活用することは主流である。
選手が黒い着衣をユニフォームの下や、練習着の上に着ている写真を見て、以前であればこれは何だと、不思議に思った方も多いと思うが、サッカーにおいても選手のデータを用いることが主流になってきているので、その黒い着衣の中にはGPSが入っていることをご存知の方も多いのではないかと思う。
GPSは選手一人ひとりの走行距離、スプリントの回数、速度、心拍数などを計測する。そのデータを解析、分析し、練習の内容や、個々のプレー向上に活かしていく。その他にはチーム全体としての走行距離をはじき出したり、選手が試合中にどのエリアでプレーしているか、そのデータを配信して視聴者にわかりやすく解説するために用いられたりする。
GPSは普段の練習でも身につけていて、練習の強度などをコントロールするために、常に計測し把握することにも使われている。このトレーニングメニューであればこのくらいの心拍数を狙って練習させたい、この日は練習全体で10㎞近く走らせたいなど、細かくフィジカルコーチを交えて練習の構成を考えている。
それは試合の日に最高のコンディションで挑むために、逆算して週のスケジュールを立てているのである。

試合の流れや状況によっては、走行距離が平均を上回ったり、下回ったりすることは当然あるが、1試合平均の走行距離は10㎞ほどで、MFの選手がチームのなかで一番走るポジションだと言われている。
試合に勝っていて無理に攻めにいかなくてもいい状況であれば、引いて守る時間が多くなるので走行距離自体は少ない数値で、逆に負けている状況であれば点を取りに行かなくてはいけないので、走行距離、スプリントの回数は高い数値を記録することもある。
ファウルが多い試合や、お互いがロングボールを多く使う展開であれば、走行距離は短くなったりする。
試合内容によって数値が変わるとはいえ、今日は走っていない…などと判断されてしまわないようにと気が抜けないし、試合の勝ち負け以外にも気になってしまうことの一つだった。
選手間でもこの前の試合の走行距離がどうだったか、お互いの情報を交換することもあった。わかりやすくいうと、テストが何点であったか、通信簿がどうだったかのような感覚と似ているかもしれない(笑)。

他に計測していたものでいうと、練習前後の体重を毎日量ることと、体脂肪率や水分量を計測していた。筋肉の疲労度がどのくらいか数値化していたこともあった。科学の力を使って分析することは、今後も加速していくことだろう。
以前のさわレポでも体重のことについて書かせていただいたが、現役時代は体重計に乗らなくてもおおよその体重がわかるということをお話しした。
サッカー選手を引退してからは体重計に乗ることがなくなったので、今の体重がどのくらいなのか、把握できていない自分がいた。引退してから筋肉も落ち、未知数なところがあったので、およそ10カ月振りに体重計に乗ってみた。
現役時代の体重は74kg~78kgの範囲で推移していた。シーズンが始まる前や冬になると多く、夏場は74kg台というのが私のおおよその体重曲線だった。

選手時代に行ったファン感で、のび太くんの衣装を着た自分の写真を見て、太ももの筋肉があんなにすごかったのかと改めて驚いた。当時と違って太ももは細くなり、おしりも小さくなった。上半身の筋トレを頻繁にするタイプではなかったが、上半身も細くなったと言われることもある。今までこんなに筋肉が落ちたことが無かったので、体重の予測が難しかったが測ってみることにした。
小さいジャンプを何回かし、ジャンプした感覚を感じる。「んん~。76kgくらいかな」
そしていざ、体重計に乗る。なんと!!ジャスト76kg!
自分でも驚いてしまった。自分の特技にでもしようかと妻に相談したところ、私も毎日量っているから大体わかるよと一言…。体重計に乗る機会が多い方であれば取得できる能力なので、ぜひ皆さんもお試しください。

最近の私。

選手時代とは違い、一日のルーティンが変わり、不規則な時間にご飯を食べることも多くなった。
サッカースクールを終えて家に帰ると21時半を過ぎることもあり、そこからご飯を食べることになるのだが、体には良くない。炭水化物を取らないなど気を遣ってはいるものの、ご飯を食べてから就寝するまでの時間の間隔が短いこともあるので、今後の自分の体形が気になる。
なおかつ、体を動かしたいと思わないのだから、怖い。
現役時代にあれだけ動かしていたのに、こうも変わることなのかと自分でも驚いている。

小学生の頃憧れていた選手が引退し、久しぶりにテレビなどで拝見することがあるが、太ってしまった選手のことを見かけてショックを受けたことが何度かあった。
なんでそうなってしまったのか、今は理解できる。
体型を維持するには努力が必要だ。

皆さんにお伝えしたことで、意識が変わることを自分に期待したい。


澤口雅彦
ファジアーノ岡山に2009~2018シーズン在籍し、2020シーズンをもってプロサッカー選手を引退。
2021年3月下旬に株式会社ファジアーノ岡山スポーツクラブに入社し、新設した『クラブコミュニケーター』として、事業部門、および普及スクールコーチを担務し、地域とクラブの発展に寄与する活動をしてまいります。


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