澤口雅彦レポート~さわレポ21~ —OFF THE BALL—

日が暮れるのが早くなり、朝晩が少し涼しくなってきて秋を感じる今日この頃。
シーズンもあっという間に3分の2が過ぎてしまい、残り3カ月ちょっと。
夏を終えると、一気にシーズンが終盤に差し掛かっていくイメージが現役時代にはあった。
夏の暑くジメジメとした中での試合は体力的にもきつく、1年の中でも体重の管理が難しい季節だ。日々のトレーニングの積み重ねで落ちていく体重を、いかに緩やかな減少に留めるかが夏の時期には大切になってくる。

私の場合、夏の試合では試合後の体重がおよそ3㎏減っていた。もちろん大半が水分にはなるが、よりエネルギーを消費する夏の試合後に私の顔を見た人から、「顔がげっそりしたね」と言われることが定番であった。
試合の走行距離をみると、平均して一番走っているのがボランチの選手で、次に多いのがサイドの選手…というのが私の記憶の中では多い。
試合後に減った体重を戻すのが大変で、炭水化物を多めに取ることを意識してはいるものの、少しずつ体重が落ちていく傾向があった。

2009年のJリーグ初年度は、年間51試合というスケジュールもあり、体重が戻りきらず日に日に体重が落ちていき、コンディションを落としてしまったこともあった。
そんなことを経験し、1シーズンを戦いきるにはコンディション管理と、食事を取ることが大事なのだと学んだシーズンでもあった。

2013年8月、前半終了間際の写真。ユニフォームが汗でびっしょり濡れている。

そんな夏場の暑くて辛い時期を、個人的にはチャンスだと捉えていた。
夏生まれの夏男にとっては、「この季節がやってきた!」と意気込んでいたのだ。私のプレーの特長の一つは、走ることだと思っていた。攻撃時にドリブルで打開できるタイプではないので、ボールが無いところでいかに走って良いポジショニングを取るかで勝負していた。
そんな戦い方をしていた私は、対峙する選手の顔色をうかがってプレーしていた。相手が疲れている状態、息が上がっていることを確認すると、チャンスだと思いゴールを目指して長い距離を走る。これを相手選手が嫌がっているのであれば、勝負に勝った気がしていた。これが相手チームとシステムが一緒で、いわゆるミラーゲームであれば、基本的にはサイドでは1対1の状況ができているので、大半はその選手との駆け引きだけでよい。しかし、3-4-3のシステムに対して4-4-2などのミスマッチができると、守備の時は相手MFをマークし、攻撃時には相手DFにつかれるということがあり、頑張って走って相手選手を振り切っても、違う選手にマークされるということにイライラすることがある。

しかも果敢に攻撃を仕掛けてサイドを駆け上がっていく最中、仲間がボールを失うと相手MFが自分より前にいるのだから、さらにイライラする。間に合うように瞬時に切り替えて走って帰るのだ。サイドの選手は、その連続である。

そしてイラっとすることがもう一つ。体力的に相手選手を疲弊させ、これからだ!という時に選手交代をして新しい選手が出てくる。せっかくチャンスだというのに、フレッシュな選手が出てくるのだ。交代に追い込んだ…といえば評価できるかもしれないが、結果として現れないので悔しいところである。

かつて、このサイドの走り合いで一番厄介だった選手がいる。紅白戦で戦う機会の多かった田所諒である。根性の塊だ。彼との紅白戦は個人的にはつまらなかった。お互いひたすら妥協せず走って守備に入り、攻撃に出ていくので、隙も生まれなければ、何も生まれない紅白戦であった。(笑)

暑い夏の戦いを終えると、いよいよリーグも終盤にさしかかり、色んな意味で緊張感が増してくる時期となる。これからが本番だ。
当然のことながら、順位は気になるところの一つである。そして個人としても来シーズンの契約がどうか、今シーズンの出場時間がどのくらいか、チームに結果を残せているか、意識する時期でもある。契約の世界で生きる選手にとっては、1試合も無駄にできないし、練習試合、練習も気が抜けない。シーズンの疲れが出てくるのもこの時期であり、この時期に怪我をするとシーズン終了にさしかかり、大きい怪我をしてしまえば来シーズンまで響いてしまう。この時期の怪我は、契約も危ぶまれてしまうところが怖いところ。

チームとしては結果を残すためにより必死になるし、勝点の重みが、1試合経過するごとに増してくる。
選手がどのような想いでプレーするのか、好きな選手にピントを合わせて試合が観られるのは、スタジアム観戦のみである。ボールを常に追いかけ、試合を観ることもいいが、ボール以外のところで選手一人ひとりが何をしているのか、OFF THE BALL(ボールを持っていない状態)の戦いにも注目していただきたい。90分のうちに長い選手でおよそ2分程度しかボールを触っていないと言われている。そこでいかに良い動きをするかも選手には求められている。

終盤に向けては、危機感迫る戦いが繰り広げられていく。
今シーズンは4チームが降格する中で、上位チームも下位チームも油断のできない状況が続いていくのが、今シーズンの一番の醍醐味。最後まで目が離せないリーグ戦になりそうだ。
これからの戦いがより重要になることを念頭に置いて、引き続き、ともに戦っていただきたい。


澤口雅彦
ファジアーノ岡山に2009~2018シーズン在籍し、2020シーズンをもってプロサッカー選手を引退。
2021年3月下旬に株式会社ファジアーノ岡山スポーツクラブに入社し、新設した『クラブコミュニケーター』として、事業部門、および普及スクールコーチを担務し、地域とクラブの発展に寄与する活動をしてまいります。


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