澤口雅彦レポート~さわレポ5~ ―熱い男―

2009年のとある日。
私は当時ファジアーノ岡山のチームメイトだった武田英明、野田紘史とともに夜ご飯を食べ終え、街を歩いていた。
そこに、前方から歩いてくるスーツ姿のふたり。
北川さん(現社長)と櫻内さん(現在FAGIANO NEWSのMCでもおなじみ)だった。この偶然が北川さんとの距離を縮めることになった。

当時の私は北川さんにはどう映ったのだろう。
サッカーだけだった無知な私の話はつまらなかったと思う。
サッカーの話、仕事の話、プライベートの話、当時どんな話をしたのだろう。
この一日がきっかけとなり、顔を合わせると気にかけてくれることになる。

この日から10年後。
シティライトスタジアムでの最後の試合。大宮アルディージャ戦。
普段はいないはずの人がいた。
選手たちが室内でのウォーミングアップを終えて、ピッチでのウォーミングアップの準備に向かう。その選手たちを出迎えるように北川さんがいたのだ。
事前に契約満了のことを伝えていただけに、目を合わせたとき、いろんなことが蘇ってきた。

北川さん 「なんか泣けてくるな」
私  「まだ早い!」

試合前にこんな会話をしたのだった。
北川さんは目を赤くしていて、もらい泣きしそうになったが、試合前に泣くことはできなかった。
勝手に泣くことがなさそうな人だと思っていたので、驚きもあったが嬉しかった。

先日、北川さんの講演を聞く機会があったのだが、熱く想いを伝えていくうちに北川さんは涙を流していた。実は涙もろい一面をもっている。

したがって、サッカー引退を電話で報告させてもらったとき、ウルウルする北川さんを想像したが、その時は意外とサッパリしていた。つかめない男だ。
この電話の際に、選手の時から引退後もファジアーノで働きたいと思っていたので、その旨を伝えさせてもらった。
北川さんからは、私自身で社員を納得させなければいけないので、私が社員と話をする機会を設けると言っていただいた。
後日、社員とのオンラインでの面接を経て、その後役員との面談を行い、何とかクリアした。
こういった経緯があって私は今ファジアーノ岡山で働いている。
この恩は仕事で返していきたい。
時には涙もろく、時には男気がある兄貴分。

試合当日のスタジアムでは「なんで整理整頓ができないんだ」とぼやきながら、荷物を整理している。家でも犬のためにキレイに掃除をしているようだ。
早く一緒に居てくれる方が見つかればいいのだが...
自分からはあまりプライベートのことを話さない北川さんだが、数年前に犬を飼い始め、その当時、それをニコニコ話す北川さんをみた時は少し心配になった。

政田のデスクでは目の前の席に座り、北川さんの仕事を勉強させてもらっている。
一人ひとりとコミュニケーションを図り、一日の動きをしっかりとみて評価してくれる。
常に前を向いて進んでいく姿勢は、停滞することを許さない。
時に厳しく、どこを目指すのか、目標に対して逆算してどうプランニングしていくか、指針を示す。
ぶれない心を持ちつつも、時にダイナミックな動きも見せていく。
このブログを書くことになったのも、ものの1、2分で決まったことだった。

ファジアーノ岡山とともに生きる、熱い心を持った男、北川さんの動きに期待していただきたい。

「ボリッボリッ、ガリッガリッ、」
今日もとなりから飴をかみ砕く音が聞こえてくる。


澤口雅彦
ファジアーノ岡山に2009~2018シーズン在籍し、2020シーズンをもってプロサッカー選手を引退。
2021年3月下旬に株式会社ファジアーノ岡山スポーツクラブに入社し、新設した『クラブコミュニケーター』として、事業部門、および普及スクールコーチを担務し、地域とクラブの発展に寄与する活動をしてまいります。


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